スタートアップの「認知変化」を生むストーリーづくり、その方法(後半)

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続きです。前回はスタートアップにとって認知変化(パーセプションチェンジ)がPR戦略において重要ということをお伝えしました。世の中の雰囲気が自分たちの思い描くビジョンの方に流れてくれれば、あとは用意した新しい体験の勝負に持っていけるからです。

手法としてプロダクトの磨き込み(体験向上)やイベント(ファン育成)、ストーリー(話題づくり)を挙げました。本稿ではちょっと理解しにくい話題づくりについて整理してみます。

宣伝はもうお腹いっぱい

スタートアップにおけるストーリーとは「社会の認知と目指すべきビジョンのギャップを埋める物語」という定義です。前回の例で言及した「電話でタクシーからスマホでUber」の物語は、決済と行き先を事前に済ませておけば移動という体験がすごく気持ちよくなる、というものでした。

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では、こういった体験を人々にどうやって伝えるのがよいでしょうか。

創業期のメルカリは取材時、サービス自体の説明をしたことはほとんどありませんでした(後発で「フリマアプリ」というキラーワードの開発が終わっていたことも要因です)。それよりも「すぐ売れる」という体験や、「これから世の中、もったいないことはしたくない」という社会の変化を伝えていました。また、ダウンロード数などを積極的に開示することで「みんなが使ってる」という雰囲気を作り出したのも彼らが上手だった点だと思います。

<参考記事>

今、私は取材する側としていろいろなサービスの売り込みをお聞きしますが、多くの場合、自分たちのソリューションを語って、社会とのギャップについて言及されることはあまりありません。あったとしてもすごく長くて難しかったり、世の中のトレンドとズレていたりすることが多いです。

ソリューションが溢れ出した今の時代、ここの言語化が非常に重要になっているのです。

ストーリーをどう作るか

本題です。これまでPOSTで実際に起業家のみなさんと一緒にストーリーを作ってみて気がついたポイントはいくつかあります。

コンテンツとして(1)社会の変化を伝える(2)構造を紐解く(3)違った一面を見せる、あたりが重要です。次に書き方としては(1)140文字に意味を入れる(2)自分で語る(ナラティブ)(3)Why・What・Howを語る。逆に良くないパターンとしては(1)定性的(2)宣伝(3)長い、という特徴が挙げられます。

(1)社会の変化を伝える

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「中国ソーシャルコマースの衝撃ーー「インスタ+Amazon」“RED”(小紅書)攻略法」

特に日本はそうですが、東京都内で一歩外に出ればコンビニがある、異常なまでに便利な社会になっています。ソリューションが溢れ、広告宣伝に晒される中、人々はそれを使う理由を求めていると感じます。

例えば「新宿のたこ焼き屋がFAX発注をデジタル化できたワケ、344兆円市場の“商機”とは」という記事では、もう誰も使ってないと思われてるFAXが未だ現役の業界でその独特の「理由」を実例踏まえて伝えています。変わりたいけど変われない、だから自分たちの存在意義がある、というメッセージです。

「なぜ人はスニーカーに熱狂するのかーートレードする若者、スーツを着なくなった40代」も同様に、話題になっているスニーカーの個人間売買がなぜ成立しているのか、そこにある世代間ギャップをうまく事例として紹介してくれました。

こういったストーリーは引き出しのひとつです。彼らはイベントやメディア露出の機会にソリューションではなく、こういった空気の変化を伝えることができるのでより多くの視点を観衆に与えることができるようになります。

(2)構造を伝える

典型的なHow to記事ですが、ここをしっかりと押さえることでそれぞれの業界のリーダーシップ認知を取ることができます(興味ある方は「ソートリーダーシップ」で検索してみてください)。最近の起業家YouTuberやTwitterランドでオピニオン出してる方の中にもいらっしゃるかもしれません。

「EXITというドラマ、起業家と投資家はどこで衝突するのか」「起業アイデアの見つけ方「3つのパターン」」「創業期に「従業員」は採用しなくていい」などは普段、裏方である投資家の認知を広げるストーリーづくりとして王道の手段です。メジャー媒体での寄稿連載や書籍出版をされる方も多い分野です。

あまりない情報テーマを見つけるのも重要です。例えば「中国ソーシャルコマースの衝撃ーー「インスタ+Amazon」“RED”(小紅書)攻略法」では、日本語どころか英語にもあまり出ていない、ローカル情報を紐解いています。言語に閉じている情報(もちろん日本から英語もありません)は実は狙い目だったりします。

(3)違った一面を見せる

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「atama plusは最初の100人を熱狂させるプロダクトをどうつくった」

ストーリー関連で私がよくお伝えしているアドバイスに「3つぐらいの顔を作る」というものがあります。王道のソリューション、業界のオピニオン、これに加えてもう一つの顔、です。

例えば「VCを卒業して「介護」という課題に挑戦した理由」では、介護サービスにチャレンジする起業家の挑戦過程を伝えていますが、彼は元々、ベンチャーキャピタルで働いていた経歴を持っていたのですね。このストーリーを作るにあたり、当初はその件について触れていなかったのですが、私にとっても意外な一面だったので、ぜひということでエピソードを追加してもらいました。

また教育関連やAIといった文脈で語られることの多いatama plusさんが投稿したPOST「atama plusは最初の100人を熱狂させるプロダクトをどうつくった」では、開発手法を公開することで組織カルチャーの作り方を表現されています。これも違った一面です。

こういった「社内にある無数の情報資産」を社内広聴し、時々のトレンドに合わせて自由自在に出し入れできる広報・PRチームはやはり強いと思わされます。

効率的なコンテンツ制作の手法を整理する

最後にアウトプット方法について少し整理しておきます。アウトプットは私たち日々、コンテンツを作る側の人でも得手不得手があります。特にスタートアップ・ストーリーとして作る場合のポイントとして(1)140文字に意味を入れる(2)自分で語る(ナラティブ)(3)Why・What・Howを語るを記しておきます。

140文字はご存知の通り、Twitterで投稿できる最大の文字数です。特に日本語は情報量が多いので、この文字数でしっかりとした意味を伝える訓練をすれば文章が筋肉質になります。意識したいのが一文一意で、この小さい塊にしっかりとした意味を加え、140文字に整理し、それを積み上げることで2000文字〜3000文字(スマホで読む時の適量)のコンテンツが作りやすくなります。

あとナラティブも最近の傾向として重要です。ソーシャルが発達した結果、嘘のつきづらい世の中になりました。創業者や経営陣が説明責任を負って真摯に語る方が、第三者視点よりも信用される時代に入っていると感じます。最後の(3)Why・What・Howは(1)の一文一意とあわせて大切で、文章に構成を作る時の羅針盤にするとよいです。

これらは各社スタイルがあると思うのでそれぞれの方法を整理しておくと便利です。