ミラティブの「採用候補者様への手紙」が採用PRで良手だったので再現性あるか考えてみた

MBOからわずか1年足らずで35億円調達に成功したミラティブがまたエモいことやってました。創業者でサードプレイスの住人、赤川準一さんがツイートしていたものなんですが、スタートアップが課題にしている「採用」について考えさせられたのと同時に、よい打ち手でもあると感じたので内容を整理してみたいと思います。

スタートアップの採用課題

ここ2、3年ぐらいでしょうか。スタートアップにとっての経営課題は、資金調達やサービスのグロースみたいな話題から「人材採用」に視点が移っている印象があります。支援しているベンチャーキャピタルなども、経営人材やエンジニアの獲得をサポートしているという話はよく聞きますし、ビズリーチのようにそれ自体を支援プログラムにしている例もあります。
スタートアップの採用で壁になるのは大体が次のようなパターンです。

  • 認知問題:知らないからマッチングしない
  • 賃金問題:空手形のストックオプション
  • 文化問題:伝統的な企業での仕事とのギャップ

実はこの中で「もったいないな」と思うことが多いのが最初の「知らないから」という問題です。最近では国内のスタートアップという企業育成の仕組みは相当に成熟度が増しており、メルカリしかり、株式公開して社会の公器となる事例も多数生まれています。

成長がある程度見えていて、よしんば事業が大成功しなかったとしても人生におけるチャレンジや学びがあるのが分かっているのであれば、参加する人にとってもスタートアップは良質な選択肢です。

一方で、その初速はやはり見えづらい部分があります。これから成長するというのは全てのスタートアップが言います。私たち取材する側も、本当はそういった真に迫る部分を聞く必要があるのですが、やはり取材も初めてみたいな創業者に「お給料払えるの?売上上がるの?ユーザー増えるの?ねぇねぇ?本心教えてよ」とは聞きづらい。

そこで効いてくるのが今回の手紙、というわけです。

スタートアップに必要な「形あるチームへの信頼」

先日本誌でも取り上げたソリウム・キャピタルという会社の重要な考え方に「Get Everyone Engaged」というものがあります。

ソリウム・キャピタルが重視していることは、公式サイトでも語られている通り「Get Everyone Engaged」です。スタートアップに限らず企業に入る際、自分が企業にとってどのような貢献を果たし、インセンティブとして何を受け取るのか。これを同社はクラウドを用いて透明性を保ちつつ、誰でも視覚的に確認できる状態にしてくれます。ーー(ストックオプションに透明性をーー従業員が株で「嘘つかれない」ソリウム・キャピタル、モルガン・スタンレーが約910億円で買収

メルカリのバリュー「All for One – 全ては成功のために」に近い考え方だと思いますが、ここで重要なのが「透明性」です。

スタートアップの創業者、経営陣は一般的に会社のオーナーシップを左右する株式を大量に保有していることが多いです。つまり会社を太らせる=自分たちの持ち分価値が上がる、という絶対的な構造があるわけです。その中で社員たちはどういうリスクを背負い、どういうアップサイドがあるのか。こういった情報を透明性高く知ることがない状態で「一緒にやろうぜ!」と言われてもしらけるだけです。

綺麗なオフィスで和気藹々とした社員ブログが大量に出回ってるけど、肝心な部分を隠しちゃう。そんなスタートアップは選択肢から落とした方が賢明でしょう。本当に信頼して一緒に仕事をしたいのであれば、相応の「形」が必要なのです。

では、こういった情報をどこで知ればいいのでしょうか。また、スタートアップ側はどこまで開示すればいいのでしょうか。今回のミラティブの手紙はそういう意味でよいお手本だなと思うわけです。

公開すべき3つのポイント

彼らのスライドは公開されているので、特に考えさせられるスライドを一部抜き出してみました。押さえたいポイントは次の通り。

  • ゴールはどこにあるのか
  • どういう働き方・文化があるのか
  • 何がリスクで、何が得られるのか

ゴールの共有

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ミッション・ビジョン・バリューはワンマン社長が「オイ若いの!パン買ってこいや」を拒否することができる素晴らしい仕組みです(こういうこと言う会社にバリューないと思いますが)。コーポレートに紐づいたゴール、行動指針に向かって全員で取り組む先が何か、この辺りはまあ当然あるべきですね。逆にここに共感できない人は早晩無理ゲーになります。
具体的な働き方、カルチャーの共有

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朝9時に出社、全員で社歌斉唱があったとして、それは事前に知っておきたいですよね。多くの人にとって仕事の時間というのは人生の大半を占めることになると思います。ここをしっかりとオープンに説明しているか、逆に「カルチャーを説明できるほど整理されているのか」は見るべきポイントだと思って反省しています。
どういうリスクがあるのか、何を得られるのか

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お金や権利の話題というのはどうしても会社>創業者>メンバーのような構造が生まれがちな部分です。知ってしまうことで余計な軋轢を生むこともあるので、確かに扱い自体は大切にすべきですが、隠してしまうことはマイナスです。ここもカルチャーと同じく「公開できる強み」が差別化になってくるのではないでしょうか。

ということで特に重要なポイントを紹介しましたが、さらに重要なのはこれらを相対ではなく一般に公開したという点です。つまり、これから家族になる人にえこひいきはありませんよ、という透明性の高さをこの手紙自体が伝える役割を果たしているのです。説明コストを激減させる効果も見込めます。

冒頭申し上げた通り「ウチのスタートアップは最高!レッツジョイン!」というのは簡単になりました。しかし、本当に最高な企業というのはこういう情報を透明性高く伝えられる、ごく一部にすぎません。逆に言えば、本当に最高の企業はこの手紙を自社ならではの方法で再現できるはずです。

ということで自信あるスタートアップ創業者諸氏は試してみてはいかがでしょうか。
追記:SmartHRの代表取締役、宮田昇始さんからの素早いレスで思い出しました。はい、こっちが元祖です。ということでもし「いや、ウチも透明性高いっスよ」っていう方いらっしゃったら @kigoyama までご一報くださいませすぐRTします。

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