スタートアップPRでやったほうがいいたったひとつのこと

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PR勉強会@朝日メディアラボ

久々の釣りタイトルです。ただ、最近、スタートアップの手法やエコシステムも成熟してきているのにPR(パブリック・リレーションズ)についてはまだまだやれること多いなと思うこともありますので、少し整理してみます。

なお、この内容は先日、朝日メディアラボさんで機会いただいてスタートアップ10社ほどの方に共有した「逆算のスタートアップPR手法」というのが好評だったようなのでそちらをベースにしております。

PRのタブーや失敗例いくつか

スタートアップされたばかりの方ももちろんですが、投資ラウンドが進んでいたとしても結構目立つ失敗例があります。

  • 広告とPRが混在した設計(WBSコスパ最高の広告換算KPI)
  • 毎月なんかプレスリリースするゾという行き当たりばったり計画
  • 取材は操作できる(事前の記事チェック問題)と思ってる

などなど。この辺りは主に「メディアリレーション=ほぼPR」と強く信じてる方が陥りがちな罠です。しかし考えてください。事業計画を立てる上で自分たちがコントロール不可能な要素(メディア掲載など)を柱に置くことはあるでしょうか?上手な方は逆です。必ず計画性があり、定期的に社会(パブリック)に対して話題を提供し、世の中ごとにしています。

キーになるポイントは「イベント」です。これについて少し紐解いてみたいと思います。

イベントから逆算するPR計画

自分たちにとって大切なパブリックとは何かを考えて関係づくり

具体的な手法を説明する前に、私たちTHE BRIDGEのことについてお話します。私たちは元々、スタートアップのミートアップがはじまりでした。集まった人たちの事業や人となりを紹介する記事を書くうち、徐々にメディアとしての存在感が大きくなっていきました。

この「小さな関係値づくり」というのが今に思えばパブリックリレーションズの基本的な動作だったように思えます。私たちにとって当時の重要なパブリックは「起業家」だったわけです。ここにいる人たちに自分という存在を知ってもらい、そして「取材させてもらう」という行動を促進するわけです。

結果、THE BRIDGE(当時のイベントはStartupDating)を応援してくれる起業家コミュニティが生まれ、私たちも彼らを記事として伝えることで次の起業家や投資家に伝播し、今の姿になることができた、というわけです。

ここでの学びは二つあります。ひとつは「自分と関係を作りたい人と実際に会って行動を生み出すこと」。もう一つは「そこで起こることを情報として発信すること」です。もう少しブレイクダウンしてみます。

イベントは人の心を集めるのに適した手法

2011年に開催していたStartupDatingのミートアップ風景。毎月実施して関係づくりをしていました

あるスタートアップがいたとします。創業から1年経ってPMFもある程度見えたので、グロースさせるためのチームをつくる必要があります。資金調達も終わり、PR活動を考えました。

「とりあえずよく分からないけど、調達ってタイミングだからTechCrunchとTHE BRIDGE、日経にリリースを送ろう。で、どうしたらいいんだっけ」。

これは正解でもあり間違いでもあります。まず、正解なのはパブリックに対して情報を出そうとした、ということです。知らなければ人は動きませんし「チームづくり」という行動はいつまで経っても小さな動き以上には拡大しません。

不正解なのは計画性がないことです。

パブリックとは誰なのか、どういう行動を促したいのか、よしんばメディアが情報を伝えてくれたら次に何をするべきなのか。イメージしてみてください。数千人、数万人を前にしたステージであなたはプレゼンテーションをするわけです。

その後、あなたのことを知った人がやるべき行動が示されていなければ勿体無いことになると思いませんか?採用なのか、新サービスの利用なのか、業務提携なのか。

伝える効果を最大化させるためにどうしたらいいか。受け皿となるイベントを用意すること、それも年間を通じて計画的なものにする。これをおすすめしています。

例えば自分たちが目指したい認知(パーセプション)があるとします。それを念頭に置きながらイベントを計画するわけです。サイズは大きいですがマネーフォワードやソラコムは年次で大きなカンファレンスを定期開催していますし、メルカリはよく見るとパブリックを縦に分類し、細かいミートアップを多数開催しています。

イベントは当然ですが自社で自由に計画ができます。このマイルストーンを足がかりに、本当に繋がりたい人たちと関係性を作り、話題を提供し、認知を「逆算」して作っていってるのです。

創業してからPMFするまでの投資ラウンド前後の方は数十名規模のミートアップ、勉強会開催がいいと思います。自分たちの友人知人レベルで集まってタレントプールを作る活動です。
投資ラウンドが進んだグロースステージの方であれば、テーマを決めて数百人規模のカンファレンスを計画するのをおすすめします。それに興味を持った運営チームが新しいPRパーソンになってくれるかもしれません。

また何も人を集めるだけがイベントではありません。新サービス、KPIマイルストーン、ありとあらゆるパブリシティのトリガーをイベントとみなし、全体計画を設計することも可能なのです。

イベントというのは人や興味、注目を集めるという分かりやすい目的が生まれます。この効果こそ、話題を作りやすいスタートアップが取り入れるべき手法なのではないかなと考えています。

オウンドメディアはスタートアップの基礎体力

イベントに向けたリレーインタビューは関係値やコンテンツを作りやすい

ではイベントを企画し、年間でいくつものパブリシティタイミングを計画できたとしましょう。これを伝える方法は何がよいか。

オウンドメディアです。POEMの考え方では、従来オウンド単体の効果について「読まれないんじゃないか」という懸念があったように思います。しかしイベントと組み合わせることでこの役割が大きく変化します。考え方は「火起こし」と同じ理屈です。

  • イベントで種火をつくる(数十人から数百人)
  • オウンドメディアで種火から焚き火にする(数百人から数千人)
  • 話題が生まれた瞬間に焚き火を大きな花火にする(数万人以上)

ニュースメディアは日々、世の中ごとになる話題を探しています。一方、世の中ごとになった瞬間のチャンスを掴める企業というのは当然、限りがあります。ではその数少ない枠に入るためにどうしたらいいか?

情報を準備しておくことです。

例えばフリマアプリという話題が大きくなった時、まずニュースメディア側はどういうプレーヤーがいるのか調査をします。この時、選定の基準になるのは間違いなく情報量です。プロダクトとして正しく情報を出しているか、ファンと正しく繋がり、支持者を集めているか、複雑な情報をきちんと整理して、自社としてまた、第三者の情報として定期的に発信しているか。

この準備がしっかりとできていなければ残念ながら存在していないのと同じ扱いになってしまいます。あと、オウンドメディアでよくある誤解に「上手な記事を書けない」というものがあります。確かに話題を喚起するような「読み物として面白いコンテンツ」はそれなりに経験も必要になりますが、オウンドメディアにそれを求めるのはやや間違っているかなと思います。

どちらかというと、自分たちに興味ある人たちと関係を作れる情報を提供する、という目的に重きを置いて、やって来る人たち(採用や業務提携、サービス利用者)を想像し、彼らに語りかけるように情報を整理して書けば、必ずコンテンツは作ることができます。

特に専門性の高いテクノロジー系のスタートアップであれば、なおさら自分の言葉で説明しておくべきです。

なお、コンテンツを作るのが難しいという方には、例えばここで掲載しているリレーインタビューなどのフォーマットをおすすめします。これ以外にもコンテンツフォーマットは多数試しているものがあり、再現性があればまた共有したいと思います。

計画的なイベントをコーポレートの資産にする


非常に粗いですが、以上が勉強会でお話した内容になります。もちろんスタートアップのみなさんは1社ずつユニークですからそれぞれに最適化させる必要はありますが、それでもPRの考え方を第三者メディア主体から自社イベント主体に変えるだけで随分と見えてくる景色が変わると思います。

イベントを計画的に企画し、それを資産化したフローコンテンツをストックとして積み上げればそれはコーポレートの基礎体力になります。「人を動かせるURL」一つ用意があれば、人々が関係を作りたいと考えた時、説明をするコストはうんと下がるはずです。

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